どう教える”放射線”
2011-10-13


10月11日のNHK番組・クローズアップ現代「どう教える”放射線”」の冒頭で、放射能汚染に関して、シーベルトやベクレルなどの耳慣れない単位があって理解しにくいので、放射能を子供たちに正しく教える努力が行われている、との説明があった。
 この番組で紹介された理科教師や番組作成のNHK担当者は、シーベルトやベクレルの意味を理解しているのだろうか。番組の中で、中学生達が、ウランの半減期は長いので広島原爆の汚染はほとんど減っていないだろうと思って、環境放射線測定器「はかるくん」を持って広島の環境放射線強度を測り、他の地区とあまり違いが無いことを知り、核爆発のウランは雨で流れて今は広島にはほとんど残っていないと知った、との話が紹介されていた。担当の中学理科教師は、高校で物理を習ったのだろうか。番組製作者は、誤りに気付かないのだろうか。
 自然科学は、測定器を持ちだして測定した結果から、デタラメな結論を出す学問ではない。実験・調査と理論・計算は物理学の両輪であり、測定結果は理論検証が必要だ。

 ここで、簡単な計算に付きあってください。

(問題1)広島原爆投下直後、ウラン238、ウラン235によってどれだけ土壌が汚染されたか、平米当たりのキロベクレルを計算しなさい。
 
 広島原爆の残留ウラン量や汚染地域範囲が分からなければ、この問題は解け無いですよね。そこで、問題を改編。

(問題1−改)ウラン238が23.8kg、ウラン235が2.35kgあったとする。これらを、1km平方の土地に、均等にばらまいた時、U235,U238崩壊による放射能の、平米当たりのキロベクレルの値を計算しなさい。ただし、ウラン238の半減期は44億6800万年(1.4E17秒)、ウラン235の半減期は7億380万年(2.22E16秒)とする。

(解答)ウラン238、23.8kgは100molなので、原子数は6.02E25個。よって、ベクレルの値は次式となる。
 6.02E25×log2÷半減期=298E6Bq
 平米あたりに換算すると、298E6/1E6=298Bq/m2≒0.3kBq/m2
 同様に、ウラン235、2.35kgは 0.2kBq/m2
 よって、求める合計は、平米当たり0.5キロベクレル。

(問題2)現在、千葉県流山市のセシウム134,137の土壌汚染は、80kBq/m2程度である。(問題1−改)でもとめた、U238,U235の土壌汚染のベクレル値はこの何倍か。

(解答)0.5÷80≒0.006  答え 0.006倍。 

 (上記計算は検算していないので、誤りがあるかもしれません。ご指摘ください)

 簡単な計算に付きあっていただいたならば、原爆のウランによる環境放射線強度への影響は、ほとんど無いことが分かるだろう。しかし、このことと、生体への影響は別だ。「環境放射線測定器では、原爆投下による環境へのウランを知ることはできない」ただ、それだけのことだ。
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