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先日、九州の韓国岳で、小学生が低体温症で遭難死する痛ましい事故がありました。家族と離れて一人で登山していたところ、道に迷って沢に転落し、怪我で動けなくなり、寒波と降雨のために低体温になって死亡したものと見られています。この遭難事故の場合、低体温症となった原因は、このようにはっきりしています。
2009年7月16日、北海道大雪山系トムラウシ山で、ツアー登山パーティー18人のうち、8人が遭難死亡する、痛ましい事故がありました。登山雑誌には、事故の特集がありますが、事故の詳細は明らかになっていません。
この記事のタイトル『トムラウシ遭難考(8)』は、8月14日の記事の続きのつもりです。このBlogでは、8月16日以降も『トムラウシ遭難考』について書いていました。
事故の概要をおさらいすると次の通り。
ツアースタッフ3人+登山客15人のパーティーは、大雪山系を2泊3日の予定で縦走した。初日の天候は悪くはなかったけれど、2日目は雨の中、ヒサゴ沼避難小屋まで歩いた。縦走としては、やや軽めのコースで、ほぼコースタイム通りだった。3日目、早朝から雨だったが、トムラウシを巻いて、下山しようと出発した。稜線に出るまでの歩行時間は、ほぼコースタイム通りだったが、稜線に出てから北沼分岐まではコースタイムの2〜3倍を費やした。ここで、幅2m深さ15cm〜30cmの小さな流れを渡渉した際、女性客一人が行動不能になった。行動不能者にスタッフ一人が付き添ってビバーク、他の人たちは先に進んだ。しかし、少し行ったところで、さらに3名が行動不能になった。スタッフ1名と登山客1名が付き添ってビバークし、他の登山客と残りのスタッフ1名が下山した。下山した登山客10人のうち、2人2組の計4人は夜間のうちに自力で下山し、1人は翌朝捜索が開始された後に自力下山した。登山客1人と下山に付き添ったスタッフ一人はヘリで救助され、下山した登山客4人が亡くなった。北沼付近でビバークした登山客は二人がヘリで救助され、3人が亡くなった。北沼付近でビバークしたスタッフは、1人がヘリで救助され、1人が亡くなった。合計死亡者8人の大量遭難である。死亡原因は低体温症で、死亡した登山客7人全員が、下着まで濡れていたとの報道がある。
多くの人の関心が失われている中、無関係の私が、これまで、この事件について、継続的に書いてきた理由は、一つには、なぜ、これほどまでに被害が拡大したのか、このパーティーは危機に直面したときに、全員が人命救助を優先させようとしたのだろうか、全員が人命救助を優先させれば、もっと被害を小さくすることが出来たのではないだろうか、そういった疑問があるためです。さらに、無事生還した人たちがマスコミに話していた内容やインターネットで公開された話の内容が、私の持っている登山の常識や、これまで遭難した人たちがマスコミ等に話していた内容と多きく異なっているように感じられたためです。特に、生還した登山客の一人である、戸田新介氏の意見には、賛同しかねるものがあります。
多くの人は遭難した経験はないので、実際に遭難したときに、100%最良の行動が取れる事はないでしょう。運良く生還した人の最良でなかった点を検証して、今後に役立てられれば、それで十分だと思います。しかし、最良の行動でなかったにもかかわらず、『俺の行動は正しかったんだ!』との主張が横行してしまうと、今後の遭難事故では、同じ行動を取るべきであることになってしまい、将来に大きな禍根を残すことになりかねません。このような危惧が有るため、『俺の行動は正しかったんだ!』との主張に対しては、疑問を提起すべき、あるいは反論すべきことがあると思って、これまで書いていました。
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