本の紹介−歴史のなかの貨幣
2025-08-22


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黒田明伸/著『歴史のなかの貨幣 銅銭がつないだ東アジア』(岩波新書)(2025/3)
 
 中世日本では、独自貨幣を発行せずに、渡来銭が使われた。江戸時代になって、寛永通宝の時代になると渡来銭の使用はなくなったが、かつて大量に使用されたため、現在でも残存数は多い。
 本書は、唐代以降、東アジアにおける貨幣製造と利用に関して、詳しく書かれている。寛永通宝以降の日本と、清朝以降の中国については詳しくない。
 貨幣は銅あるいは銅合金なので、銅の生産が貨幣製造のカギを握る。10世紀ごろまで、中国では酸化銅鉱物が銅材料だったが、11世紀以降は銅硫黄鉱物を銅材料として使えるようになり、銅生産の増大をもたらした。このことが、渡来銭においても、北宋銭が主流である要因になっている。300年ほど遅れて、日本でも銅硫黄鉱物が利用できるようになると、日本の銅生産量が飛躍的に増大た。日本独自の貨幣鋳造がなされていない時代には、銅は輸出に回されたものも多いが、私鋳銭も多く作られたはずで、できの悪いのは鐚銭として区別できるが、できの良いものは、中国官鋳銭との区別は難しい。
 また、鋳造の流動性を向上させるためには、純銅ではなくてスズあるいは亜鉛合金とする。しかし、日本では、かつてスズの生産が乏しかったので、純銅に近いものがあり、鋳つぶれを起こした鐚銭の多数残存している。
 このほか、本書では撰銭と撰銭禁止令についても詳しく書かれる。明の撰銭は、青銅色の宋銭を評価し、新しく作られた硬化を下等に評価したそうだ。上手に宋銭を私鋳して、数年かけて古色を付ければ、それなりに儲かるような気がする。日本の撰銭では、永楽通宝が高評価される地域が合ったので、明の撰銭とは価値観が違うようだ。
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