本−パール判決を問い直す
2022-06-09


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中島岳志,西部邁/著『パール判決を問い直す 「日本無罪論」の真相』講談社新書(2008/7)
 
 読むことをすすめない。
 
 対談集はあまり好きでない。学者や評論家などは、論文を読んだり書いたりするのは専門だろうが、人の話を聞いたり話したりするのは、 どうも得意でない人が多いようだ。このため、学者や評論家の対談集は、読みにくいものが多いように感じる。もっとも、池上彰のように、話すことが専門の人の対談集は読みやすくて良い。
 
 本書は、右翼系学者と右翼系評論家の対談集。著者の一人、評論家の西部は以下の説明をしている。  この本(中島岳志/著「パール判事東京裁判批判と絶対平和主義 白水社」)は、パール判事のA級戦犯無罪論を肯定的な文脈で紹介していますが、 これはおそらく日本の広い意味での、左翼勢力への十分な批判になり得ています。
 一例を挙げれば、靖国神社参拝反対、と言うときの左翼勢力の最大の根拠は、東條英機以下A級戦犯が祀られているから、という理屈です。 このA級戦犯という判断は、まさしく東京裁判を肯定するという立場からしか出てこないわけです。
 中島君は、東京裁判の判決が法律論として問題がある、それどころか棄却さるべきだ、とすら認めています。 だから、左翼は、中島はA級戦犯という存在を否定している、これは許せない、マスコミから抹殺すべきだ、となるはずであるのに、正反対の反応をしている。(P15)  靖国神社問題が一番話題になったのは1960年代後半から1970年代前半のことで、この時は、左翼のみならず、キリスト教界・仏教界もこぞって、靖国国家護持に反対した。 このときは、まだA級戦犯は合祀されていなかった。西部は年配者なので、この時のことは知っているはずで、左翼による靖国反対の最大の論拠がA級戦犯合祀問題でないことぐらいわかってるはずだ。 それなのに、「靖国神社参拝反対、と言うときの左翼勢力の最大の根拠は、東條英機以下A級戦犯が祀られているから」などと、いい加減なことをいう。 もし、これが対談でなくて、論文なり解説書なりだったら、もう少しまともな推敲がなされていたと思われ、残念な本だ。
[本]

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