太地町のイルカ大屠殺−太地町イルカ漁を考える
2015-09-27


3.WAZAの決定とJAZAの決断
 2015年4月、世界動物園水族館協会(WAZA)は、太地町のイルカを水族館が購入することが「動物の福祉」の倫理規範に違反するとして、日本動物園水族館協会(JAZA)に会員資格停止を勧告した。これに対して、JAZAでは太地町のイルカを購入しないことを約束してWAZAに復帰した。
 現在、欧米各国の多くの水族館のイルカは、水族館で繁殖したものを使っている。水族館は教養・教育施設であるため、多数のイルカを必要としないので、水族館で繁殖したイルカで間に合っている場合が多い。これに対して、日本の多くの水族館は、営利目的の娯楽施設として、イルカショーがメインの出し物になっており、多数のイルカが必要なために、太地町追い込み漁で活け取りされたイルカを必要としていた。今後、イルカの調達が容易ではなくなるので、営利・娯楽施設から教育・教養施設へと転換を図る必要性に迫られるだろう。
  
 こうした中、太地町「くじらの博物館」では、JAZAを脱退して、太地町イルカを購入しショービジネスを進めるそうだ。教養・教育よりもビジネスを優先する、民度の低い国民性の表れだろう。情けない。 
禺画像]
(太地町イルカを購入しショービジネスを進める 太地町「くじらの博物館」)
 
  
4.調査捕鯨について
 日本は学術調査の目的と称して、南氷洋で捕鯨を行ってきたが、2014年の国際司法裁判所の判決では、調査に名を借りた事実上の商業捕鯨であるとの理由で禁止された。太地町では、調査捕鯨船・第一京丸が展示されている。
 学術調査ならば、多数の学術成果を発表して、日本人海洋学者が各国の大学教授のポストを確保すればよいのに、ほとんど成果のない調査しかしてこなかったのだから、禁止されて当然のことだ。
禺画像]
(かつての調査捕鯨船 )
  
  
5.情報発信不足と反対運動の押さえ込み
 太地町イルカ追い込み漁に強く反対しているシーシェパードの論理は、要するにイルカを採ることが嫌いであるとの感情論だろう。これに対して、和歌山県や太地町の見解は、要するに食べたい物を食べて何が悪いという感情論だ。シーシェパードの論理は単純な感情論だが、和歌山県や太地町の見解は販売のための商業捕鯨を自分たちの消費であるかのようにごまかしている点で、たちが悪い。
 どちらの感情論が国際的共感を得ているかといえば、シーシェパードの圧勝だろう。今後、和歌山県や太地町は、感情論をやめて理性で説得するか、国際的共感を得られるような情報発信が必要なのに、そのような努力も能力も欠如しているようだ。情報を隠して、警察と海保で取締りをするだけの対応では国際理解は得られない。
     
禺画像]
  (シーシェパードのイギリス人青年。悲しい表情でイルカ追い込み漁を見つめていた。)
  
 ルイ・シホヨス監督が作成した映画「ザ・コーヴ」は、2010年にアカデミー賞を受賞した。この映画には、イルカショーが残酷であるとして批判するメッセージと、太地町のイルカ屠殺は残酷であるとする2つのメッセージが含まれている。前者については、WAZAの決定により、日本の多くの水族館も太地町イルカ購入を断念した。

続きを読む
戻る
[その他]

コメント(全9件)
※コメントの受付件数を超えているため、この記事にコメントすることができません。


記事を書く
powered by ASAHIネット