本の紹介−先送りのない日本へ
2013-04-05


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サンフランシスコ条約会議に、中華人民共和国・中華民国ともに、招かれていない。特に、中華人民共和国は、この時期、国際社会での発言力が乏しかったことは、中学生程度の歴史の理解でも、十分に、知られているはずのことなのだが。新藤氏は、史実とはおかまえなしに、短絡的に「自分たちの領土だと考えていなかったから」と判断してしまったのだろうか。
 ところで、新藤氏の考えるように、サンフランシスコ条約当時、中国が、尖閣を自分の領土と考えていなかったとしたら、中国には、領有主張の権利は無いのだろうか。同じことは、日本の北方領土問題にも当てはまる。サンフランシスコ条約締結国会で、日本政府は、放棄した千島に国後・択捉が含まれると、明確に答弁しているので、日本の領土と考えていなかったことは確かだ。しかし、現在、日本はロシアに対して領有主張をしているが、これは、不当なことと、新藤氏が考えているようには見受けられない。自分の利益だけに都合の良いダブルスタンダードは、政治屋さん得意の手法なので、特に驚くことではないが。


興味が持てる記述もある。  実は1979年(昭和54年)、大平(正芳)内閣の時に、沖縄開発庁が「尖閣諸島調査」という調査を実施しています。何と仮設のヘリポートを作って、31名の調査団が11日間島に滞在して、今私が提案したような調査を、すでに一度やってきている。しかし、それ以降「尖閣諸島の問題はとりあえず棚上げにする」という政治合意のもと、尖閣諸島には誰も上陸さ せず、近づくことも制限するような状態が続いてきたのです。
 ただ、「尖閣諸島のことは棚上げしておこう」という政治合意を中国から実質的に破棄してきた以上、私たちが尖閣諸島を無人島のままにしておく必要はなくなりました。(P106)  尖閣棚上げ論に対して、日本には「日中の合意」とする説と、「中国が一方的に言ったこと」とする説がある。外務省は、後者の、中国が一方的に言ったと、説明をしているが、新藤氏の本では、日中間の合意であったとしている。新藤氏の認識は正しい。新藤氏の考えに、外務省を従わせるだけの政治力を発揮してほしい。それが、こじれてしまった、日中関係を改善する手段ではないだろうか。
 新藤氏は「政治合意を中国から実質的に破棄」としているが、いったいどのような事実を言っているのだろう。中国政府は尖閣を支配していないので、棚上げ合意を破棄したくても、現実問題として、破棄できないのではないだろうか。軍事侵攻でもするならば別だが。もし、新藤氏の言うように、元々棚上げ合意があったのだとしたら、合意時点の状況に戻せばよいだけのことであり、簡単なことだ。日本は、国有化を止め、議員の上陸を謝罪すればよい。中国人も上陸しているが、こちらは、すでに、日本政府が処分しているので、解決済みだ。

 P33には、鬱陵島・竹島の周辺地図が記載されている。この地図では、竹島と鬱陵島の距離が84kmと書かれている。外務省のホームページには92kmと書かれている。新藤氏の本の記述は、正確な韓国側の知見を使っているのだろう。デタラメな外務省のホームページの地図は、新藤氏の本を見習って、正しく改定すべきだ。

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