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日本国境戦争 21世紀・日本の海をめぐる攻防 山田吉彦/著(ソフトバンク新書)禺画像]
昨年9月、尖閣沖で、中国漁船と海上保安庁の船が衝突し、中国漁船長が逮捕された事件から、1年余りになる。この事件では、海上保安庁の撮影したビデオが、不正にユーチューブに流され、漏洩させた海上保安庁の職員が逮捕された。また、同じころ、メドベージェフがクナシリ島を訪問した。このようなことがあって、日本では、国境問題・領土問題に対する関心が高まったため、最近、関連の図書の出版が多い。
これらの本は、冷静に事実を解説するものから、いい加減な知識で日本の正当性を一方的に主張するものまでさまざまだ。
この本の内容は、中国の拡張を、日本人に警告することに主眼が置かれているようだ。いい加減で誤った知識を前提としているわけではないが、我田引水的説明が多く、著者の結論には疑問が残る。このような疑問点は、随所に見られるが、そのうち、中国、台湾、ロシアに対する疑問点を、各1点記す。この3点のみが疑問というわけではない。
最初に、中国の記述として、本書P30あたりに対する疑問点を記す。
近年、中国船が、尖閣近海で漁業を行っている。12海里以内は日本の領海なので、中国漁船は、日本の海上保安庁が排除するが、それより遠い海域は、日中漁業協定の類推解釈で、互いの船が漁業をし、取締りはそれぞれの国の管轄である。
本書では、中国漁船が尖閣近海で漁をするのは、経済的理由からではなくて、漁業の実績を作り、領土拡張の目的であるかのように書いている。その根拠として、「海上保安庁関係者の話では中国漁船が取った魚をわざわざ高く買うらしい」としているが、この書き方では、根拠のない噂話に尾ひれをつけて、妄想を繰り広げているとしか思えない。
日本でも、稲作をはじめ第一次産業には政府補助金が出されていることが多く、これは、世界的傾向なので、中国でも漁業に補助金を出す、あるいは、市場の魚価をコントロールしている可能性はある。しかし、尖閣沖の漁など、特定海域のみを保護することは可能なのだろうか。取れた魚を漁港に持っていけば、どこで取れたのかなど分からないので、特定海域に補助金を出すならば、漁民が虚偽申告をするだろう。尖閣周辺海域の漁業実績を上げるために、この海域の漁業を何らかの形で奨励しているとの推測には賛成できない。もし、そうだとしても、本書は、この点が、まったくの説明不足である。
日本では、東北地方の太平洋沿岸漁民が北海道沖でサンマ漁をすることがあるが、この場合、漁港と漁場との距離はおおよそ500kmで、中国大陸と尖閣の距離と大体、同じだ。サンマ漁が成り立つならば、クエ・マグロ・タイ・カワハギ漁が成り立つ可能性があることは、容易に推測できることだ。
次に、台湾の記述として、本書P162あたりに対する疑問点を記す。
台湾の活動家も、尖閣が中華民国の領土であると主張しており、尖閣上陸を試みるなど、過激な行動に出る者も存在する。2008年6月、台湾の活動家が、尖閣に接近したとき、日本の海上保安庁の船に沈没させられたことがあった。このとき、台湾は、尖閣諸島は中国の領土であり、日本の艦船が、台湾の領海内で台湾の船を沈没させた上に、船長を不法に拘留したとして、船長の早期釈放と沈没被害に対する賠償請求を行うとの声明を出した。
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